もはや愛してくれない人を愛するのは辛いことだ。
けれども、自分から愛していない人に愛されるほうがもっと不愉快だ。
ジョルジュ・クールトリーヌ
行為が終わり、着替える彼女に茶化すように言った。
「願い事が叶って良かったよ」
彼女は微笑みながら、こう答えた。
「あんな願い事で良かったんですか?それにそもそも願い事叶っていないですよw」
2016年7月7日
今日は七夕。
年に一度、短冊に願い事を書き、笹に吊るす。
ナンパ師界隈のみならず、世間にも広まりつつある「ザオラルメール」。
連絡が途絶えた女性に奇想天外なメールを送り、復活を図る。
ナンパをする人にとっては絶好のザオラルメールを送るいい日である。
俺も例外にもれず、死番となった女の子たちにメールを何十通送った。
ザオラルメールはインパクトが大切なため、笑いが取れるような奇想天外なものがいいと思っている。
色々と考えた結果、ひとつ面白い内容を思いついた。
返信があるかどうかは神頼み。彦星と織姫を味方につけるしかない。
早速、携帯が鳴った。
ザオラルメールに対する返信であった。
それからさらにいくつかの返信があり、全部で20通ほどの返信があった。
その中に半年ほど前にバンゲした女の子から返信があった。
当時、ナンパを始めたばかりで声かけのテンプレなどはなく、とにかく粘る事しか頭になかった。
その時にタダオ通りでバンゲした女の子。
どんな声かけでバンゲしたかは覚えていない。唯一覚えているのは、JDでモデルをしているという事だけ。
記憶を呼び起こすと目がくりっとしてて、あひる口、そしてとても愛嬌のある笑顔。
せっかくの返信を無碍にはできない。
細い糸を慎重に手繰り寄せ、なんとかアポにこぎつけた。
某日
待ち合わせ30分前に彼女からメールが。
「ごめんなさい。10分ほど遅れます。」
遅れる旨を事前に連絡するなんて、なんて律儀なんだ。
こういう小さいところに気配りができる子はモテるだろうな、と思いつつ、近くにある蒸気機関車を見つめていた。
待ち合わせに現れた彼女は白いブラウスに黒に柄の入った膝丈のスカート。
小雨が降っていたたため、黒い傘をさし、歩み寄ってきた。
相変わらず、愛嬌のある笑顔。この笑顔に何人の男性が恋に落ちてきたのか。
ただ、ナンパをする以上、オンリーワンになるわけにいかない。
オンリーワンになっても、何もいい事がないのは経験済み。
心は踊っているが、表情は冷静を装い、彼女に久しぶりの挨拶をした。
「かなり久しぶりだね。元気にしてた?」
彼女は満面の笑みで答えた。
「はい、おかげさまで!」
あの時、声をかけていなければ、ザオラルメールを送らなければ、この再会はなかったと思うと、とても感慨深い気持ちになった。
「立ち話もなんだし、早速近くのカフェにで行こうか」
「はい、行きましょう!」
道中、お互いの近況報告も兼ねて、色々な話をした。
学校の事、恋愛の事、モデル業の事。
知らない事ばかりで話を聞くだけで十分楽しかった。
カフェに到着し、飲み物を頼む。
このカフェはナンパを始めるきっかけになったとある方と初めて出会った場所。
今日のげん担ぎにはもってこいであった。
テラス席に座り、さらに深い部分を引き出す会話をした。
少し前に彼氏ができたということだった。
彼氏グダを事前に防いでおく必要があると思いつつ、話を進める。
ただ、話を聞けば聞くほど、わかったことがある。
彼氏は俗に言うハイスペであった。
そして、夕方から彼氏とドライブデートの予定。
急遽、このアポにタイムリミットができた。
リミットまでに何もできなければ、負け。
一瞬動揺するもここは気持ちを切り替えて、彼氏を褒めちぎることにした。
またお酒が好きで男性的な性格であることも分かった。
「昼間から飲むお酒ってなんであんなに美味しいんだろうねぇ」
という切り口から、居酒屋を打診。打診は快諾された。
「よし、居酒屋探し散歩でもしようか!」
また彼女は満面の笑みでこう答えた。
「お、いいですね!行きましょう!」
居酒屋はすぐに見つかった。
ここは連れだしでもお世話になっており、初のコンビ即を達成した場所。
さらなるげん担ぎ。
居酒屋では日本酒と馬刺しを注文し、俺の地元である九州の話をした。
住みやすく、食べ物も美味しく、美男美女が多い、など。
ここでも様々な話をした。
しかし、一向に即れる雰囲気がない。
笑ってはくれるものの食いつきを全く感じない。
健全解散。この言葉が頭をよぎった。
今日は普通に楽しく食べて、飲んで、それでさよなら。
これだけ可愛い子と談笑できたし、このまま終わっても悪くないな、と思った。
しかし、瞬間的にある言葉を思い出した。
ギラつく勇気
一般人とナンパ師の大きな差は、ここではないかと常々感じていた。
そして、今自分は一般人と同じようなことを考え、同じように振舞おうと考えていた。
このままではダメだ。
席を立ち、トイレに向かった。
用を済ませ、手洗い場の鏡を見つめ、自分に言い聞かせた。
「このまま何もなくていいのか?なんのために今まで経験を積んできたんだ?」
洗面台で顔を洗った。
冷たい水がとてもいい刺激になった。
「よし、今日は何としても最後まで全力を尽くす。そして、結果を残す。」
気持ちを切り替え、席に戻った。
席に戻ると彼女は目が少しとろんとしていた。
「目がとろんとしている。もしかして、昨夜は寝不足?」
「昨日は高校の時の同級生と遅くまで飲んでたので。正直、少し眠いですw」
そして、開口一番にこう切り出した。
「そういえば、就活で内定もらった、て話してたけど、もう誰かにお祝いしてもらった?」
「実は最近もらったばかりでまだなんですよ〜」
ピンチと思われた状況が一転チャンスに切り替わった。
「それなら、ささやかだけど一番乗りでお祝いさせて。おすすめの赤ワインがあるから、乾杯しよう!」
ワイン好きは事前に引き出していた情報。
続けざまにこう付け加えた。
「それに祝いといえば、ケーキだよね。うちの近くに食べログでとても評価の高いケーキ屋さんがあるから、そこのケーキでお祝いしよう!」
「なんていうケーキ屋さんですか?」
「○○駅から歩いてすぐの○○というケーキ屋さんだよ。」
「え!?その駅の近くに友達が住んでるので何度か行ったことありますw」
まさかの出来事。
ナンパの神様が味方してくれたにちがいない。
このチャンスを逃すわけにはいかない。
彼女もほろ酔いで気分がよさそう。
レンタルルーム打診を考えていたが、ここは一気に切り替えて直家打診。
まさかの快諾。
即への光が差した瞬間であった。
彼女の気分が変わらないうちに居酒屋を後にし、いざ自宅最寄駅へ。
最寄駅近くのスーパーでワインとチーズを購入。
そして、自宅近くのケーキ屋で好きなケーキを選んでもらい、そのまま自宅へ。
すぐにワイングラス、食器を用意し、お祝いの準備。
ケーキをおいしそうに食べる彼女の笑顔は何度見ても、飽きないし、癒される。
家ではだいぶ突っ込んだ話、特に恋愛関係を引き出した。
今まで彼氏は10人弱。
高校生から彼氏が途切れたことがない。
今まで自分から告白したことはない。
いいなと思った人には告白してくるよう振舞っていた。
浮気やワンナイトの経験なし。
言葉だけ見れば、ラーメンでいう粉落としばりに硬い女の子。
お酒も多少入り、いい感じになったところでレッテル効果とコールドリーディング開始。
Sっぽいけど、実はドMでしょ?
彼氏や周りには頼られたり、甘えられたりするけど、本当は甘えたがりでしょ?
仕事が始まったら、今までのように遊べない。今のうちにいろいろと経験していたほうがいい。
何事もやらずに後悔より、やって後悔でしょ?
これがすべてうまく刺さり、だいぶ心を許してくれたように感じた。
あとはギラつく勇気。
「いつもお姉さん的、時にお母さん的に振舞っていたら、疲れたりするでしょ?
今日だけは甘えてみてもいいんじゃないかな?」
そう言って背中からハグをする。多少グダはあるものの力は入っていない。
「背中からハグされると結構落ち着くでしょ?」
彼女は照れ臭そうに答えた。
「…はいw」
「夕方から彼氏とドライブなら、うちで少し仮眠とるといいよ。横になりな」
「いやいや、大丈夫ですよw」
言葉では拒否られたが、ハグしたまま彼女とともに横になった。
そして、一度離して彼女が起き上がらないか確認。
ここで起き上がったら、本気グダの可能性があるため、再度和み直しが必要と思っていた。
しかし、彼女は起き上がらなかった。
ここからは言葉はいらない。
一つずつ行動を起こし、グダがなければ、SEXまでいける。
そして、彼女は言葉では拒否るものの、体はとても素直であり、下半身を触るとそれがすぐにわかった。
ただし、ここまできてできていないことがある。
キスである。
キスだけは頑なに拒否され続けた。
以前、名古屋の駅中で声かけし、当日SEXした女の子もキスだけは頑なに拒んでいた。
当時の経験を生かし、彼女になぜキスしたくないのか核心に迫る言い方で聞いてみた。
「キスだけは特別だよね。体は許しても、キスだけは彼氏との特別なものだよね」
「…うん。」
「その気持ちとてもわかる。以前に同じような子がいて、その時もキスだけはできなかったw」
「タダオさん、どんだけ遊んでるんですかw」
「そこはご想像に任せる。けど、キスしたぐらいで揺らぐような彼氏ではないでしょ?それに実はキスは好きとみた。」
「え?なんでわかったんですか?」
「自分が一番好きなものを許すということは、それだけ相手を受け入れたってことだからさ。だから、キスだけは彼氏という存在にしか許したくないってことだ」
「タダオさん、なんでもお見通しですねw」
「伊達に経験してないからねwただ、お互い好きなことを我慢するのは体によくない。それにキスしたぐらいで彼氏への思いがぐらつくとは思えないよ、あれだけ素敵な彼氏なんだから。」
一瞬彼女がキスへの抵抗を弱めた。
気づいたら、俺の唇と彼女の唇は重なり合っていた。
初めて出会ってから約半年後。
半年前に戻れるなら、その当時の自分にこう言ってやりたい。
「あの時は勇気を持って声をかけてくれて、本当にありがとう。あの勇気を無駄にせず、短冊への願い事は本当に叶うって事を証明するため、死力を尽くしたよ。」
「そして、短冊の願い事はちゃんと聞き入れられたよ。」
行為が終わり、着替える彼女に茶化すように言った。
「願い事が叶って良かったよ」
彼女は微笑みながら、こう答えた。
「あんな願い事で良かったんですか?それにそもそも願い事叶っていないですよw」
そういえば、俺の本当の願い事は彼女とのSEXだったが、実際に送った願い事はとてもくだらない事であった。
これはまたの機会に。
最後に俺にこのブログを書きたくなるきっかけを与えてくれた方に
感謝の意を込めて、この言葉を使わせていただきます。
ありがとう
ドキドキできたよ。
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