「運命は変えられないの。夕日が沈むのを止められないように。」
シミ・スカイウォーカー(スターウォーズエピソード1 ファントム・メナス)
いつしか二人は寄り添っていた。
今までの偶然はすべて運命だったということを、彼女は受け入れたようでもあった。
「まさかあんな広い場所であんな再会を果たすなんて。」
『偶然とは思えないことばかりだったね笑』
「そうだね。さっきも言ったけど、俺たちは出会うべくして出会ったんだと思う。これは運命なんだろうね、きっと。」
『そうかも!』
「だから、これから起こることもすべて運命で、変えられないことができないと思う。二人がキスをすることも。そして、セックスをすることも、ね。」
『え・・・?』
「これから起こる運命を受け入れる準備はできてる?」
しばらくの沈黙の後、彼女は黙って頷いた。
ふるさと祭り。
年に一度、東京ドームで開催される日本全国から伝統の祭りや名物グルメが集結する祭典である。
某日。
ブルックさんより一通のLINE。
「ふるさと祭りのチケットもらったから、行こう。」
ブルックさんとはひょんなことから仲良くなり、ナンパについて相談にのってもらったりしている。
常に落ち着いており、兄貴的な存在で困った時には的確なアドバイスをしてくれる。
(ただし、お酒を飲むとポンコツになる。)
元々ブルックブログの読者であった俺としては、これほど嬉しいことはない。
二つ返事で行く旨を伝え、当日を楽しみにした。
当日。
待ち合わせ場所は水道橋駅の西口改札前。
このイベントにはのりたまさん、ベムさん、オジーさんの3名も一緒に行くことになっていた。
時間より少し早めに着いた。
ドーム内での声かけ練習として、改札付近で待ち合わせをしている女の子に声をかけた。
「今、何時ですか?」
『○時○分ですよ。』
「間違いなく○時○分ですよね?」
『そうですね笑』
「おかしいなぁ。○時○分にこの駅の改札で待ち合わせって約束してるんですけど、まだ来ないんですよねー。俺のスマホだけ日本時間受信できてないんじゃないかって心配してたところです。」
『笑笑』
「もしやお姉さんもふるさと祭りに行かれるんですか?」
『そうなんですよ~』
「奇遇ですね!俺も友達とそのふるさとなんとかに行くんですよ。もしや、去年も行
きました?」
『行きましたよ♪』
なんだかんだ話が弾み、話し込んでいるうちにのりたまさんとオジーさんが到着して
いるのが横目に確認できた。
この子は彼氏と行くらしく、イベント会場で出会ったら乾杯しようと約束をし、その
場を離れた。
先にのりたまさん、オジーさんと合流。
のりたまさんは相変わらずの高身長イケメン。
オジーさんは前回会った時より、爽やかさが増しており、生田斗真のようなオーラが出ていた。
遅れてベムさん、ブルックさんが合流。
ベムさんの笑顔はいつ見ても、子供のように無邪気で楽しそうだ。
ブルックさんはいつ見ても、胸元が開いている服を着ており、風邪をひかないか内心ヒヤヒヤしている。
ここに異色の5人が集まり、何かが起こる予感がした。
正確には何か面白いことを起こそうという雰囲気に満ち溢れていた。
早速5人でドーム内に入り、まずは乾杯。
その後、みんなで様々な地域のお店を見て回った。
牛タンや唐揚げなどでお腹を満たし、コンビやグループで来ている女の子を探した。
しかし、イベントの性質上、カップルや家族連れが多い。
人が多く、ナンパ師は自由人が多いということもあり、2:3ではぐれた。
俺はブルックさんと2人で適当にぶらぶらしつつ、声かけできそうな女の子を探していた。
ドーム内の出店をほぼ見終わった、その時。
ふと前を見ると、試飲コーナーで飲んでいる二人組の女の子を発見。
「それ、なんていうお酒ですか?」
このイベントで初の声かけ。
彼女たちが飲んでいるお酒を聞き、飲んでみたいお酒があったため、軽い会話をした。
2人の出身地を聞き、うち1人の出身地が同じであり、会話は多少盛り上がった。
飲み終えた2人は、その場を立ち去ろうとしたため、バンゲ打診をブルックさんに確認。
「ここはバンゲせずにまた会った時に運命トークしたら、いいんちゃう?」
まさか、このアドバイスが後々活きるとはこの時は知る由もなかった。
その後、2人でさらに歩き回った。
しかし、めぼしい女の子はおらず、これ以降の声かけはしなかった。
歩き回った疲れもあり、はぐれたのりたまさん達の場所を確認。
座席に座り、休んでいるとのことで早足でその場へ向かった。
みんなが待っている場所へ到着すると、そこには見覚えのある女の子達がいた。
「あー!!」
『えぇ笑』
最初に声をかけた二人組の女の子がそこにいた。
「まさかこんなところで出会うとは笑」
『笑笑』
ベムさんが率先して、その女の子達と話しており、既に片方の女の子のバンゲをしていた。
会話がひと段落したところで少し離れた場所にギャルっぽい女の子たちがいたため、声かけしに行くことに。
その場を離れる際、少し前のブルックさんの言葉を思い出した。
「こんな形で会うなんて、これはもはや運命かもね!せっかくだし、今度飲み行こう。」
『そうですね、行きましょう!』
ベムさんがバンゲしていない方の女の子と連絡先を交換した。
その後は、ギャルっぽい女の子たちをオープンするためだけにベムさんがドーム内ステージで歌っているアイドルグループのファンに混ざり、ファンに勝るとも劣らないダンスを披露したり、ベムさん持参の秘密道具を惜しげも無く使ったり、アイドルグループたちとハイタッチをしたり。
この日はベムさんに【男気】というものを教えてもらった。
みんな、ナンパをしているためかとてもユーモアがあり、楽しい時間はあっという間に過ぎた。
その後は特に何もなく、みなそれぞれ予定があったため、18時過ぎに解散した。
帰路の途中、バンゲした子にメールを送った。
ただ、あまり和めなかったし、食いつきの有無さえ判断できない。
スルーされて当たり前、そんな気持ちで返事の期待はしてなかった。
しかし。
21時過ぎ。
ふるさとからの便りがあった。
彼女からの返信だ。
『こんばんは!まさかあんな形で再会するとは思ってませんでした笑』
彼女達はふるさと祭りが終わった後に場所を移動し、飲み直していた。
ここはダメ元で飲みの後に会えないかどうか打診するために電話した。
ドーム内での偶然の再会から話を切り出し、お互いの話を少しした。
「そういえば、家はそこから遠いの?俺は○○線の××駅だよ!」
『え!?ちょっと待って笑。私、△△駅だよ笑。』
同じ沿線やないか!笑」
なんと同じ沿線に住んでいることも判明。
これは本当に運命なんじゃないか、と思った。
解散後、俺の最寄駅の居酒屋で飲むことを約束し、電話を切った。
しばらくして、彼女から今から向かうと連絡が入った。
寒空の中、最寄駅で会った彼女はほろ酔いで顔を少し赤らめていた。
「だいぶ酔ったでしょ?」
『全然シラフだよw』
いつしか彼女からの敬語はなくなっていた。
そして、今日初めて会った気もしない。
「今日、初めて会ったとは思えないぐらいw」
『初めてじゃないよ?』
一瞬、彼女の言葉の意味が理解できなかった。
しかし、、答えはすぐに分かった。
「あ!ドーム内ですでに2回会ってるから、これで3回目か!」
『その通りw』
「もはや、これは運命だな。」
『そうだね!』
「お酒買って、うちで朝まで飲み明かすのも運命ってことにしよう笑」
『うん、そうしよう笑』
最寄りのコンビニに立ち寄り、足早に自宅に向かった。
お酒を飲みながら、お互いの話をした。
どんな些細なことでも笑ってくれる彼女の笑顔は、とても素敵だった。
お酒もそこそこ入り、場はとてもいい雰囲気に包まれていた。
いつしか二人は寄り添っていた。
今までの偶然はすべて運命だったということを、彼女は受け入れたようでもあった。
「まさかあんな広い場所であんな再会を果たすなんて。」
『偶然とは思えないことばかりだったね笑』
「そうだね。さっきも言ったけど、俺たちは出会うべくして出会ったんだと思う。これは運命なんだろうね、きっと。」
『そうかも!』
「だから、これから起こることもすべて運命で、変えられないことができないと思う。二人がキスをすることも。そして、セックスをすることも、ね。」
『え・・・?』
「これから起こる運命を受け入れる準備はできてる?」
しばらくの沈黙の後、彼女は黙って頷いた。
行為後、疑問に思っていたことを率直に聞いてみた。
「今日は来てくれてありがとう。運命とはいえ、今日初めて会ったばかりの俺の家に来てくれたけど、怖くなかったの?」
『全然怖くなかった!なんか落ち着いてて話しやすかったし、何よりたくさん笑わせてくれたし・・・』
「笑わせてくれたし・・・?」
『私の好きな芸能人に似てたし笑』
これが俗に言うタイプ落ちってやつか。
これはこれでもちろん嬉しいが、魅了したとは言えない。
ナンパをする者としては、まだまだ精進が必要だ。
今後の課題をぼんやりと考えていると、彼女の寝息が聞こえてきた。
今夜はこの寝息を子守唄にしつつ、眠りにつくことにしよう。
いい夢が見れそうだ。
翌朝。
彼女は休みで俺は仕事。
朝から手をつないで、駅へと急いだ。
途中すれ違った人々たちは恋人同士にしか見えなかっただろう。
二人が出会ってまだ1日も経過していないなんて、誰も知る由もない。
お互い進行方向が逆のため、向かい合わせのホームで電車を待つ。
時折合う視線になんだか照れくささを感じる。
それぞれが乗る電車が同じタイミングで到着し、お互い乗り込む。
ほどなくして、電車は動き出す。
数多くの人のさまざまな運命を乗せて・・・
ナンパには夢があった。
———
ふるさと祭りに招待してくれたブルックさん、同行していただいたのりたまさん、ベムさん、オジーさん。
皆さんのおかげで楽しい思い出がまた一つ増えました。
本当にありがとうございました。
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